マンガでほっこり
実は、こういう本には懐疑的な、天邪鬼な私です。
「そんなに簡単に《きもち》がわかってたまるか!」とー。
ですが、「こういう本」と一括りにしてしまったことを大いに反省。とても良い本でした!
著者の北川なつさん(女性と思っていたら男性「見た目はごっつい兄ちゃん」だとか!)は介護福祉士やケアマネもお持ちの漫画家・絵本作家。
「介護あるある!」満載で、フードコートにて一気に読了。
これだけの内容で、1100円という定価も安いと思います。(私の本が「高い」と言われても当然ですね~)
監修者の柳本文貴さんも同資格と社会福祉士をお持ちで「NPO法人グレースケア機構代表」とあります。
裏表紙の漫画がまた秀逸!
漫画を添えないと面白みが伝わりませんが、著作権等の問題もあるでしょうしセリフだけの引用にとどめます。
「介護してる人間のきもちなんて誰もわかってくれない・・・ねぇシロ」
「介護されてる人間のきもちなんて誰もわかってくれない・・・ねぇシロ」
シロとはこのお宅で飼われている白い猫。介護する人もされる人もシロを撫でながらシロに グチを聞いてもらっています。そこで3コマ目、困ったような表情をしたシロの呟き
「あ~ストレスたまる」
クスっとしていただけましたか?やっぱり実物読まないと無理かな?
介護職員等へのアンケートから言葉を抜粋したページもあり、そこもまさに「介護あるある!」
お年寄りと言っても、もう戦後生まれが後期高齢者になる時代、ビートルズやハンバーガーなどのファストフードが好きな人だって珍しくないのです。
私も認知症のお年寄りのケアに携わっていたことがあるので、職員アンケートの言葉の中には身につまされるものもありました。p38より
90歳の人に叱りながら食事をすすめている職員がいた。もう好きなように食べたらいいと思う。
いましたよ、実際にこういう人。最初は確かに使命感のようなものからだったのかもしれませんが、何年も経つうちに、ヒステリックに言うことを聞かせようとするイジワルとしかいいようのない職員が。(どこの施設にもひとりくらいはいるのかも)
食事もですが、水も。これも脱水が恐いのはわかりますが、無理やり飲ませるのは拷問であり、虐待です。
面と向かってその職員に指摘しても、シフトが一緒の時ばかりじゃないので、いない時にはもっと酷いことになっていたり・・・。
自分がそういう扱いを受けたらどういう気持ちになるのか、想像することすらしない人は一定の割合で存在するようです。共感力がない、というのはその人の脳がそうなっているので、その人を責めたところでどうもなりはしないのですが、こういう職員がひとりいると、入所者様はもちろん、職員もストレスが溜まりますよね。
介護職員の離職率の高さは介護そのものより、職員同士の人間関係が一番大きいのでは?
「!」と思った文章を引用しますね。p83の漫画の中のセリフからです。
肩書はもちろん大切ですが、まっ裸の自分を試されるようなこの仕事に魅力を感じたんですね。
これは、法学部出身の介護士が同僚に「超エリートじゃん、もったいない」と言われたあと、この仕事に就いた理由を説明したときのセリフです。
認知症の女性が「このヤブ医者!」と(実際に評判の悪い医師)を罵るのですが、その同じ女性が、介護職の女性には、じ~っと手を合わせていたのだそうです。
p161より
介護職を続けていると、不思議な出来事に遭遇することがあります。例えば、末期ガンで、検査結果からすると、のたうちまわるほどの痛みがあるはずなのに、鎮痛剤を最後まで全く必要としない人がいた」(中略)
人の想像を超えたものを見ることのできる介護職は、人間に対する興味が深い人ほど、飽きることのない仕事だと思います。
確かに不思議な出来事に遭遇した経験は私にもあります。ただ神秘的には感じても、何らかの理由はあるはずで、脳内でどういう現象が起こっているのか、それを知りたいと強く思っています。
最後にp185
介護する人・される人、認知症のある人・そうでない人、障がいのある人・そうでない人・・・。人はどうしても分けたがるものですが、そんな境界線はなくなればいいなあと思います。
は、本当に同感です。きれいごとを言っているわけではなく、そもそも「分ける」ことなど無理でしょう。
介護関係の本(に限らずでしょうが)は玉石混交、トンデモ本も少なくないですが、この本はお勧めできるものでした。