三ヶ月のご無沙汰
前回から三ヶ月以上経ってしまいました。
今回も武雄図書館にて借りてきた本の紹介です。
14冊借りてきましたから、2週間延長するとしても、2日に1冊は読了しなければなりません。(その後随時アップができたらいいのですけれど・・・)
まずは伊藤亜紗さんの「体はゆく」から。
なんといっても奇抜なタイトルに目を奪われたのです。
装丁も面白く、一瞬「どういう意味?」と思いましたが、副題にできるを科学する〈テクノロジー×身体〉とあったので、これはもう、まさに私が疑問に思っていること、知りたいことがズバリ解説されている本だろうな、と。
その予想は裏切られませんでした。
とにかく面白かったです!
でもその前に、著者の伊藤亜紗さんについて。 プロフィールには、
1979年生まれ。美学者。
東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長。
同リベラルアーツ研究教育院教授。専門は美学、現代アート。
とありました。ここで恥ずかしながら「美学って?」
なんとなく、「芸術作品などを研究する学問」のことなんだろうなとは思いましたが、念のためWikipediaにて調べてみました。それによると
美学は、美の原理などを研究する学問であり、18世紀に成立したとされる哲学の一分野である。美の本質や構造を、その現象としての自然・芸術及びそれらの周辺領域を対象として、経験的かつ形而上学的に探究する。
哲学の一分野、形而上学的に探究・・・わかるような、わからないような・・・。
内容に移りましょうね。引用したいところばかりです。
プロローグ:「できるようになる」の不思議
体が先に行ってしまう
からもうぐいぐい引き込まれます。
(株)イマクリエイトが開発した「けん玉できた!VR」という製品の効果についての説明(その中に以下の動画の紹介があったので、貼り付けておきますね)に続いて
物理法則にしばられた地球上のリアルな空間と、テクノロジーによって作り出されたバーチャルな空間。言葉を使って記述すればこの二つの空間を区別することは簡単です。けれども「けん玉できた!VR」が示しているのは、体から見れば、この二つの区別はそれほど自明なものではない、ということです。
バーチャル空間で体験したことも、それがいかに現実には「ありえない」ことであったとしても、何ら遜色のない「経験値」として蓄積され、リアル空間で行為する私たちのふるまいを変えてしまう。しかも「リアルではない」と頭で分かっていたとしても、体はそれを、いわば「本気」にしてしまうのです。
とありました。
何ら遜色のない「経験値」として蓄積され、ふるまいを変えてしまう。— ゾクゾクしますね。
ここにあるのは、私たちがどんなに意識して「リアル」と「バーチャル」のあいだに線を引こうとも、その境界線をやすやすと侵犯してもれ出てくるような体のあり方です。体は私たちが思うよりずっと奔放です。
この奔放さ―著者は、「ある意味で、体はとても『ユルい』ものです。」とも言っています。
このユルさが、私たちの体への介入可能性を作り出します。体がもし確固たるものであったなら、「けん玉できた!VR」のようにテクノロジーを用いて、体の状態を変えることは不可能だったでしょう。”体はゆく”—体のユルさが、逆に体の可能性を拡張しているともいえます。
この体のユルさがあるからこそ、同じVRを使って幻視痛を緩和する試みも一定の成功を収めているのでしょう。
プロローグからの引用ばかりになってしまいましたが、せひ本書を手に取って、読んでみてくださいというほかありません。
それくらい面白く、どこもかしこも引用したい箇所ばかりだったのです。
本文は5章からなり、5名の理工系研究者との対話を通して著者の知見が集約されて います。
下記に5名の研究者のお名前とその章のタイトルをあげておきますね。
(1)古谷晋一:ピアニスト・ソニーコンピューターサイエンス研究所リサーチャー 「こうすればうまくいく」の外に連れ出すテクノロジーーピアニストの為の外骨格
(2)柏野牧夫:NTTコミュニケーション科学基礎研究所柏野多様脳特別研究室長 あとは体が解いてくれる ― 桑田のピッチングフォーム解析
(3)小池英樹:東京工業大学情報理工学院教授 リアルタイムのコーチングー自分をだます画像処理
(4)牛場潤一:慶應義塾大学理工学部教授 意識をオーバーライドするBMIーバーチャルしっぽの脳科学
(5)暦本純一:東京大学大学院情報学環教授 セルフとアザーのグレーゾーンー体と体をつなぐ声
これら5章、すべてワクワクドキドキするような研究結果で、興奮しながら読み進めたのですが、
特に第1章の古谷晋一氏の開発した「手にはめるエクソスケルトン」(見た目はガンダムのモビルスーツのようなのだとか)は使ってみたい!と思いました。
これについてもYoutube動画がありますので、貼り付けておきますね。
第4章、牛場潤一氏の「(人間にはない)しっぽをふる課題」の奇抜さにも脱帽。
この実験の参加者になってモニター画面を眺めつつ、しっぽをふってみたい!(なんとなくどうすれば「しっぽをふる」ことができるか、わかるような気がするのです)
BMI(Brain Machine Interface)のリハビリへの応用など、興味が尽きません。
続く第5章、暦本純一氏の「カメレオンマスク」も面白い仕掛けだと思いました。
カメレオンマスクがどういうものかは、本書からそのまま引用します。
~物理的な仕掛けとしては、ある人に顔にipadをつけて、その画面に別の人の顔を映すというもの。Ipadはインターネットにつながっており、顔をリアルタイムで映し出し、また声もとどけてくれます。物理的な体はここにいるAさんだけれど、顔と声はここにいないBさんのもの。文字通り、自在に変化する他者の仮面を被った状態です。(中略)
このシンプルな仕掛けが、不思議な身体感覚をもたらします。まず、まわりの人が、その人をここにいないBさんとして扱うようになるのです。(中略)物理的に体がここにあるAさんよりも、ここにいないけれどiPadを介して顔と声が届いているBさんの存在感のほうが優先されるのです。
これに関連して著者は、オリィ研究所のOriHimeについても触れています。
OriHimeについては、私自身も分身ロボットカフェを体験したことがあり、その時にブログ(拙い動画もあり)もアップしたので、宜しかったら覗いてみてください。
今日の五行歌466~刹那を - ちのっぷすの徒然五行歌 (hatenablog.com)
久し振りのアップなのに、要点をうまくまとめられず、長い上読みづらい文章になってしまい申し訳ありません。<m(__)m>(それなのに、最後までお付き合いくださりありがとうございます!)
ぜひぜひ、本書を読んでみてくださいね!
これに懲りず、《読書覚書》どうぞちょくちょくお立ち寄りくださいませ。