F・クリックの訃報に接して
急遽、昔の本をひっぱりだしてみました。
初版は1995年11月ですが、私の本は1995年12月の第二版。
もう30年(!)も前に手にした本なのですね。
この家に引っ越してきた年(10月)でもあり、娘たちが2,3歳の頃ですから、まだ伊万里図書館には通い始めていなかった頃だと思います。
だからこそ、2800円の本を買うしかなかったのでしょうね。
アマゾンもまだ利用していない時ですが、どこで買ったかは覚えていません。当時近くにあった本屋(今はスーパー)にも並んでいたのかもしれません。
F・クリックが、J・ワトソンとともにDNAの二重螺旋を発見しノーベル賞を受賞したことはもちろん知っていました。(私が生まれた年のノーベル生理医学賞)
翻訳は中原英臣氏と佐川峻氏、お二人の共著によるブルーバックスシリーズは何冊か読んだように思います。
「DNAに魂はあるか」という邦題がまず、「魂」を掴みますよね。
(私自身はそもそも「魂」自体「無い」と思っていますが)
副題が「驚異の仮説」となっていて、私はナマイキにも「驚異」でもなんでもないだろう「当たり前」じゃないの?と思ったような気がします。
それともこの本を読んでから、そう思ったのか?いや、やっぱり違うと思います。
私にとっての「当然」をノーベル賞受賞科学者に「太鼓判」を押されたような気がして我が意を得たり!とばかり、迷わず「高い」本を買ったのでしょう。
年子の幼児2人を育児中の母親が読むような本ではないですよね。
ところで、邦題はセンセーショナルですが、原題は
The Astonishing Hypothesis: The Scientific Search for the Soulとなっており、
「驚異の仮説」そのままのようです。副題の方が「魂の科学的探究」。
DNAはどこにも出てきていないのですが、このタイトルの付け方の販売戦略、唸るしかありません。
まず、表紙カバーから引用しますね。その前に画像を見て欲しいのですが、

この中央部分、今では老眼鏡を使わないと読めない程小さい文字で書かれています。
「驚くべき仮説」では、脳のふるまいはすべてニューロンの活動によっていると考える。
傍点が付けられないので、太字にしましたが、「脳のふるまいはすべてニューロンの活動」によって説明がつくとクリックは考えていたのですね。
(ニューロンだけでなく、当時は顧みられていなかったグリア細胞も関与しているらしいですが・・・)
表紙カバーの扉部分には、
「私の言う驚異の仮説とは、あなたが無数の神経細胞の集まりと、それに関連する分子の働き以上の何ものでもないという仮説である」
と、この本の内容の集約が書かれています。
まえがきの一行目には、
意識は神秘的だ。それを科学で解き明かすには、どうしたらよいだろうか?
ズバリとした答えは、現時点では大変むずかしい。
「30年前の現時点」どころか、正真正銘の「現時点」でも「大変むずかしい」ことに変わりはないようですね。
この部分は原著では、
This book is about mystery of consciousness-how to explain it in scientific terms.
I do not suggest a crisp solution to the problem. I wish I could, but at the present time this seems far too difficult.
となっていますが、翻訳の方は超訳と言ってもよいほど、簡潔に「ズバリ」表現していますね。
本文を全部読み返す気力は、今の私にはないので、最後の付章「自由意志について」からもちょっとだけ引用して終わりにします。
自由意志とは、色々な意味でどこか古風な主題である。(中略)
物理学者のなかには、量子力学の不確定性原理が、自由意志の根底にあるのではと疑う人もいる。
本文の内容からは少し逸れるのですが、この「量子力学の不確定性原理が、自由意志の根底」と言う部分に強く反応したことを覚えています。
「疑う人」とはロジャー・ペンローズを指しているのでしょうか?
2年後の1997年に出版された「ペンローズの量子脳理論」もまた購入しています。
訳者は竹内薫氏と茂木健一郎氏。茂木さんとは同じ年の生まれで、一時期、立て続けに著書を読んでいました。
30年前、子育てそっちのけで(娘たちには本当に申し訳ない!)こういう類の本にハマっていたのに、それを突き詰めるでもなく、のほほんと生きてきたのが30年後の今の私。
もう1回、きちんと勉強したいなぁという気持ちは常にあるのです。
あるのですが、さすがに「今さら?」
うんにゃ、あと30年ある!
科学者になるのは無理でも、一般向けの科学書の良き読者であり続けることは・・・
できますよね?
この数年、特にこの1年で一気に進んだ老眼と戦いつつ・・・読書は続けようと気持ちを新たにしています。