ちのっぷすの読書覚書

『!』と思った文章や琴線に触れた言葉のメモ集

動物たちは何をしゃべっているのか?

久し振りに動物もの

例によって例のごとく、武雄図書館の新刊本コーナーから、嬉々として借りてきた本です。

ゴリラ研究の第一人者山極寿一先生と、シジュウカラの言葉を「発見」した鈴木俊貴先生の対談集ですから、これはもう、いの一番にカゴ(いつもの図書館用マイバスケット)に入れましたとも。

で、昨今にしては珍しく、借りてきた当日に一気に読了!(気持ちいい!)

そのわりに、この読書覚書へのアップは遅くなりましたが、まぁ、そこはご勘弁。

まえがき鈴木先生が担当。

本書は鳥になった研究者とゴリラになった研究者が、言語の進化と未来について語り合った記録である。

と、まず記されています。

鳥になった研究者とは、もちろん鈴木俊貴先生のことで、ゴリラになった研究者とは山極寿一先生のこと。

まえがきからもう少し引用します。

ゴリラの世界を知り、ゴリラになった山極さんだからこそ、人間社会に伝えたいことが山ほどあるに違いない。私もシジュウカラを研究し、彼らの豊かな世界を知り得たからこそ、見えてきたことがたくさんある。

ね? これはもうワクワクしながら読み進めるしかないですよね。

私自身、シジュウカラの研究を進めるうちに言語の進化に興味を持ち、類人猿の鳴き声の研究にも注視していたが、山極さんも同様に、言語の起源に興味を持ち、シジュウカラの研究を知っていたのだ。シジュウカラとゴリラという姿形の全く異なる動物を研究する2人であるが、実は「言語」というキーワードでつながっていたのである。

では、対談のスタートです。

鈴木 だから僕は、一度、人間と動物という二項対立から離れて、もっと俯瞰的な視野から言葉や人間の能力とは何なのかを理解する必要があると思うんです。そこでやっと、人類が進化の過程で言葉を手に入れた意味は何なのかがわかってくる。

山極 そう。それと、言葉によって可能になったものは膨大にあるけれど、その代償として失ったものも大きいと思うんです。この本では、そこにも光を当てたいと考えています。

言葉の獲得による大きな代償・・・ふと天才的な絵を描いていた自閉症児が、言葉を使えるようになるとともに、年相応の平凡な絵しか描けなくなったという事例を思い出しました。

少し逸れましたね。先を急ぎます。

Part2《動物たちのこころ》の小見出し『共感する犬』より。

山極 犬の知性についてはここ数年で一気に研究が進み、今では類人猿より認知のレベルが人間に近いと言われています。例えば、人が指さした方向を見ることができる。これは、限られた動物しか持たない能力です。

鈴木 オオカミの赤ちゃんと犬の赤ちゃん、あと人間の赤ちゃんの認知能力を比べた研究論文を読んだことがあるんですが、犬の赤ちゃんはオオカミよりも人間の赤ちゃんに近いみたいですね。

 うちのクーちゃんも、僕のちょっとした表情や仕草を理解してくれるんです。それにクーちゃんには白目もあります。

山極 白目があると視線の方向がよくわかるから、意図を他の個体に伝える必要性とともに進化したと言われていますね。人間ははっきりした白目を持っていますが、他の霊長類はそうでもない。

 そして犬もくっきりした白目を持つ珍しい動物です。犬の祖先であるオオカミに白目がないのに犬にはあるのは、人間に飼われるようになってから犬だけに起こった進化だと言われています。

そうか、そういわれてみれば、犬には時々白目が見えますね。視線を動かすのがわかります。猫は決して指さす方向ではなく、指自体しか見ないのと対照的でもありますね。

奥山民枝先生の「犬の目の中の月、日」

チンパンジーやボノボ、ゴリラのような類人猿にも白目に当たる部分はあるようですが、ではなく黒っぽい色をしているため黒目との区別がつけづらいと何かで読んだことがあります。

つまり類人猿の視線はわかりづらく、「視線を読む」必要があるのは人と犬だけなのかもしれません。

続けて引用しますね。

鈴木 大人しくて人に友好的な動物になる「家畜化」ですね。

山極 そう、最近改めて光が当てられているのがソ連のドミトリ・パリャーエフが行った野生のギンギツネの家畜化の実験です。彼が人懐っこいギンギツネの個体だけを選んでかけ合わせを繰り返した結果、40世代くらいで犬みたいになってしまった。

(後略)

鈴木 オオカミが犬になるまでに3万年くらいかかったのに、キツネは人為的に従順な個体を選択するだけでたった50年くらいで犬みたいになったんですよね。だから、いわゆる知性や共感する力も、実は短期間で進化した能力かもしれない。

とここまで書いて下書きに入れたまま1週間以上が経過していたのですが・・・

ここでまたシンクロニシティっぽい現象が。

9日付けの朝日新聞朝刊23面の書評欄に、青土社刊「キツネを飼いならす~知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語」が取り上げられていたのです。

著者は、リー・アラン・ダガトキン(米ルイビル大教授)とリュドミラ・ドルート(ノボシビルスクの細胞遺伝学研修所所長)のお二人。

訳者は高里ひろ氏。評者は小宮山亮磨氏。

書評の中にドミトリ・パリャーエフの名は出てきませんが、

犬や猫などのペットが、「なぜこんなにかわいいのか」という問いがまず前提としてあり、

この問いに一つの答えを出した科学者たちが、冷戦時代の旧ソ連にいた。彼らはキツネを飼いならし、オオカミからイヌへの進化を再現した。本書はその大がかりな実験の記録だ。

とあることからしても、彼とその仲間たちによる実験のことを指しているとみて間違いないでしょう。

山極先生「最近改めて光が当てられている」と発言されたのも、この本が出版されたことを指しているのかもしれません。

まだまだ引用したい箇所は沢山あるのですが、あまりに長く下書きに入れっぱなしにしていたので、中途半端ですが、ここでいったんアップすることにします。

後編としてpart3,4がアップできたらいいですが、このまま尻切れトンボかもしれません。<m(__)m>