軽くて重い本
ヘンテコリンな見出しですみません。
武雄図書館新刊本コーナーで借りてきた本です。
漫画仕立てなので、薄くて軽い本なのですが、内容は重い本でした。
両親とくに母親の認知症介護と向き合った本なので重いのは当然でしょう。でも決して暗くはないのです。
渦中にあった時は、もっと惨くて辛い現実もあったはず。
ですが、ほのぼのタッチの漫画で、セリフも軽妙なので、考えさせられるページはあっても、さくさくと読み進めることが出来ました。読後感も爽やかです。
「たづ砲」「ブラックたづちゃん」「エンジェルたづちゃん」とはよくぞのネーミング!!
認知症ケアの仕事に携わっていると、易怒性といって、突然怒り出す方はしばしば見られる為「そういうこともある」と平常心で接することもできるようになってきますが、家族となると、なかなか難しいでしょう。
娘である主人公に、理解ある夫と優しい娘二人の存在がなかったら、もっと悲惨だったと思います。家族の支えは、本当に大切。
骨折して入院した母が病院のベッドに拘束されているのを見ての帰宅後、泣き崩れる主人公の肩にそっと手を触れ「大変だよな。よくやってるよ」と気の済むまでその胸で泣かせてくれる夫。
夫はわかっていた それまでのいろいろ
今の現状 彼は戦友のようだった
その晩 私は一生分くらい泣き、一生分悩んだ
限界が近いかもしれない
夫は「理解ある」以上に主人公の気持ちの寄り添い、共感し、支えてくれる存在でした。「戦友」と呼んでいるのも頷けます。
こんな夫婦の間のこどもですから、離れて暮らす娘二人も優しく思いやりの深い女性です。
娘と二人で見舞いに行ったとき、悪魔のような形相に豹変していた母から暴言を浴びせられ、深く傷ついた主人公のモノローグを漫画の中から拾ってみます。
相変わらず「たづ砲」は痛すぎる 認知症の人は人格が変わると言うが、本当にその通り
あんな鬼のような形相のたづさんは見たことない
悲しいと悔しいと怒りがぐちゃぐちゃになってた
もう少し引用します。
認知症と同じ土俵で戦ったらダメだ 病気なんだもん
一生懸命私たちを育ててくれたたづさん あんなふうになるのはだづさんの妄想がそう言わせているだけ そう思うことにしよう
そしてそんな日も私はノートに自分の気持ちを書いた
正直に 認知症が進んでいく記録としても たづさんが生きた道のりも
そして「母と娘の学習ノート」は「たづちゃんノート」に変えた
わけのわからないことを言うたづさんに「ちゃん」をつけたらえらいかわいくなって なんだか少しだけ気が楽になった
このほかにもデイサービスで入浴してきたのに、「入ってない」といいはる母を風呂に入れた時のエピソード、デイサービスの送迎スタッフにそのことを話すと
「ああ、わかります 娘さんもめっちゃたいへんだと思いますぅ」と今どきの若者言葉でありながらも最大限の共感を示してくれるセリフなど、ホロリとさせられるシーンも随所に。
漫画の間に介護についてのコラムも挟んであり、現在進行形で介護中の人には役立つ情報がコンパクトにまとめられてもいます。
私の両親には今のところ、認知症はなく、むしろ娘である私の方がアヤシイくらいなので(このまま親が長生きしたら、絶対私の方が先に認知症になりそうです!それだけは避けたい!ですけれど、こればっかりは、どうなるか・・・ですよね)この本がそのまま私に役立つことはなさそうですが、読んでよかったと心から思える本でした。