ロボットと人間の関係
ご自身のジェミノイドであるイシグロイドやマツコ・デラックスそっくりのマツコロイドを作られた石黒 浩博士の本。
NHKのドキュメンタリー番組「最後の講義」が元になっている書籍で、発行所はなぜか主婦の友社。
学生に語りかける口調そのままの上、文字も大きく、余白も広いため、さらっと読めるが、立ち止まって考えると・・・。
石黒教授は見た目はコワモテなのだが、同世代ということもあって、なんとなく親近感を覚えていたが、この本で「あ、わかる!」と思ったところが随所にあった。
You Tubeでまずは教授とそのジェミノイドをご覧ください。
彼の人となりや考え方については二極化するだろう、「気持ち悪い」という人も少なからずいるとは思う。
それはともかく、「人間とは何か」を探る為の手段がロボットであるという点が一番興味深いのだ。
これは、霊長類研究から「人間とは何か」を探究している松沢哲郎教授とアプローチが違うだけで、究極の目的は同じだからである。
—とここまで書いて、あることに気付いた。
これまでの《読書覚書》はみな「です・ます調」で書いていたのに、
今回は「である調」。
統一した方がよいのだろうが、なんとなく、このままの方が筆のノリがよい。
逆に引用文は「です・ます調」、これは《引用》なので当然原文のまま。
「考える」が説明できたらノーベル賞
どうしてロボット研究をしているかについて、お話ししましょう。
実は、僕の場合はロボットをつくるためのロボット研究というより、人を知るためというのが非常に強いモチベーションになっています。
小学5年生ぐらいのときに、大人から「人の気持ちを考えなさい」と言われて、これは結構衝撃を受けたんです。
(中略)
そういう中で「人の気持ちを考えなさい」と言われて、人って何なのかとか、気持ちって何なのかとか、考えるって何なのかというのが、これはもう衝撃的に難しい問題だと思ったわけです。
(中略)
気持ちというのを、感情とかを非常にきれいに再現してモデル化したらノーベル賞だし、脳のなかの考えるプロセスを明らかにしたら完璧にノーベル賞ですよ。
ところで、石黒教授は、自身のアンドロイドであるイシグロイドと見た目がずっとソックリであるために、ご自分の方を改造しておられるとのこと。
どういうことかというと、ようするに《美容整形》の類。しわ消しとか肌の張りとか「100万かければ、5~6年はもち、10歳は若く」なるのだそう。
そういう裏話のようなことも読めてなかなかに楽しい本でもあった。
認知症や自閉症の人たちと関わる仕事をしてきたこともあり《テレノイドケア》も詳しく知りたいと思ったので、調べてみることにした。
《ハグビー》も、ほんの一瞬「欲しいな」と思ったけれど、これは30数年前、夫と遠距離恋愛していた当時にあったら、もっとよかったな。もちろん、スマホがあること前提で。
イギリスのテレビドラマ「ヒューマンズ」のように一家に一台、あるいは一人に一台(一人というべき?)ヒトそっくりのアンドロイドがやって来る日があるだろうか?
自分のことを自分以上に深く理解しているアンドロイドが傍にいたら、精神衛生上、最高に良いと思われるけれど、その時親友は?
人間の存在意義って?
そもそも「人間とは、自分とは 何?」
石黒教授のアプローチは松沢教授のそれとは対極というわけではない。
ロボットを人間を理解するためのテストベッドにして、認知科学の研究もしながら、今度はそこで得られた知見をまたロボットにフィードバックしてロボット研究開発に生かして、より人間らしいロボットをつくる。
この過程で、人間らしさとは?ひいては人間とは何か?の答えに辿り着けるかもしれない。―10年後、100年後、あるいは1000年後・・・?