ちのっぷすの読書覚書

『!』と思った文章や琴線に触れた言葉のメモ集

異彩を、放て。

ヘラルボニー

メインブログ《徒然五行歌》の方でも取り上げたのですが、やはりきちんと《読書覚書》にもアップしておくべき本だと思います。

アマゾンレビューにも投稿しましたから、重複する箇所もあるけれど、どうぞお付き合いくださいませ。

まずはヘラルボニーという不思議な響きの言葉・・・これは著者である松田文登・崇弥さんご兄弟の、自閉症の兄・翔太さんが7歳の時に何度も自由帳に記した謎の言葉で、お兄さんに聞いても「わかんない」のだとか。

そのヘラルボニーを社名にしたのは

『一見意味がないと思われるものを世の中に新しい価値として創出したい』という意味も込められているのだそうです。

以下、本文中から引用させていただきますね。

 プロジェクトをはじめた当初は、あえて「知的障害」という言葉を発信せず、ブランドとして確立しようと考えた。

 それは、「障害」という言葉を出したとたんに、ある種のバイアス(偏見)やスティグマ(烙印)にとらわれ、作品のすばらしさが適切に伝わらないのではないかと思ったからだ。それこそ、マリメッコやポール・スミスと並んでも、遜色ないブランドにしたかった。

 けれども作品に対峙しながらネクタイ製作を進めていくと、知的障害という特性があってこそ、この作品たちが生まれたのだと実感するようになった。(中略)

 知的障害の「こだわりを持つ」という特性が、唯一無二の表現を生み出しているのだ。それならやはり、ブランドとして「知的障害」という言葉を明確に示すことが、誠実だと思った。

さらに

 僕らがやろうとしているのは、まったく新しいビジネスモデルを生み出すこと。障害のあるひとが、就労支援施設での活動で得られる賃金だけでなく、資本主義社会の枠組みの中で収益を得られる仕組みをつくることだった。

始まりは、お母様に誘われて《るんびにい美術館》を訪れた崇弥さんが、知的障害者さんたちの作品に圧倒され「ここ、超ヤバいって!」と!すぐさま文登さんに電話したこと。

崇弥さんが、東北芸術工科大学のデザイン工学部・企画構想学科に進学していたことも、まるで布石のよう。

るんびにい美術館の作家さんたちアートをシルクネクタイにするために奔走し、最終的に『銀座田家』という老舗紳士洋品ブランドで商品化。

サンプルをるんびにい美術館に持って行き、正式に商品化を認めてもらったとき、

「板垣さんは『このクオリティでやろうとしていたんですね』と、しみじみ感心していた」そうです。

揺るぎない、強い、熱い想いは、繋がるべくして繋がるべきところへ繋がり、新しい世界への扉を開いたのでしょう。

ここでるんびにい美術館板垣崇志さんの語りから少し引用させてもらいます。

(前略)自分の創作表現を、最終的に大なり小なり社会的な文脈の中につなぐ作業をしない美術家というものはほとんどいないでしょう。どこかで自分を最大公約数化して、自分を翻訳していく―他者と共有可能なものに自分を調整していく。一般的な美術家がそういうものであるのに対して、知的障害のある方たちはそれをしないんです。それが大きな違いだと思っています。

もう少し引用しますね。

自閉症の方に多いように感じるんですが、思春期頃までのある時間、描くことにものすごく集中するけれども、やがて描くことを「卒業」する方がいるなって思うんです。

描かずにいられない時期が終わって、自分の中のイメージや周囲の世界を、静かに受け止めていけるようになる。外に吐き出すっていうことを、以前ほど必要としなくなる。そんな印象をうけます。

東京渋谷100BANCH岩手県花巻市るんびにい美術館、近いうちにぜひ行ってみたいと思っています。